蒼き日々

「1年通してやり続ける」ことの難しさと言ったら別格なものがある。「1年間歩き続けていかなければいけない道」を始めて見通した時には茫漠とした不安感や絶望感を想ったものだ。途中には雲を突き抜けるような巨大な壁があったり、土砂降りの雨が降って凍える夜もあった。しだり尾のような長い長い夜を一人で眠る、そんな孤独感は僕を押しつぶそうとした。東京の街で一人で歩き続ける、そんなことに対しての、えも言われぬ孤独感がそこにはあった。新しいことに挑戦する前には失敗や困難はつきものだ、と分かってはいても、目を伏せざるをえない僕がいた。いっそのこと歩くのをやめてしまおうと思った時もあった。僕を照らしてくれるような光はそこにはなかった。

しかし、僕は歩き続けた。決して歩き続けたいわけではなかった。なぜか僕は歩き続けてしまった。歩き続けることが非常に困難であるにもかかわらず、だ。僕の困難も知らず、僕の隣には陽気に笑う笑顔があったり、幸せを語る言葉があったりした。そんな彼らの笑顔が僕は好きだった。妬ましくて、絞め殺したいほどに憎かった彼らのことが僕は好きだったんだ。僕は叫び続けた。僕が愛するものへの愛、そして僕を愛する彼らに対する愛を。憎かったはずの彼らを、僕は本当に憎むことはできなかった。きっと彼らのことが僕は好きだったんだ。

半年経って、さらにもう半年経とうとしている。茫漠と長く困難に見えた道を歩く僕は笑顔だった。成長したな、と彼らは言った。あろうことか、僕は道を歩くことを楽しんでいた。共に道を歩く仲間たちはいつのまにか増え、話すことがなかったような人と朝が明けるまで話し込んだり、信じられないような人が僕のことを好きだと言ってくれたり、とにかく僕は嘘のような本当の日々を僕は楽しんでいる。目標達成はまだできていないし、そのレベルまで達しているのかはわからない。だが、僕は目標クリアのためだけに生きている人よりは幸せなのではないかと思う。だって道を歩くことをこんなに楽しんでいるから。同じような感情を持った彼らへの愛しさや、終わっていく蒼き春のような日々に対する愛しさで僕はいっぱいになる。彼らの笑顔をいつまでも隣で眺めていたいなと思う。日々を懸命に生きて、懸命に楽しむ彼らが僕は好きだ。愛してやまない。そんな兄弟みたいな彼らに対する愛を僕は全力で叫んだり、語ったり、歌ったりしなくてはならない。きっといつの日か髪の毛が黒くなって、白くなって行くような日がきっと来るだろう。きっとそれぞれの日々を僕たちは過ごしていくのだろう。それでも、そんな日々が来てもふとした瞬間に、この蒼き日々を思い出せたら今この道を歩き続ける意味はあるのだろう。終わって欲しくないこの道を、愛してやまないこの道を、僕はまだまだ歩き続ける。