二十億光年の孤独

夜空に輝く星たちは、夜空一杯に広がって、密集しているように見える。でも、星同士の距離は、人間が一生かかっても到底辿り着けないほど離れているらしい。外側からはこんなに近くに見えるのに、いざ隣同士に並んで見えても、当事者同士の間にはとてつもない距離がある。

僕は周りの人に恵まれ、とても幸せな生活を過ごしている。友達もいるし、家族も無事だし、大切な人たちを愛し、愛され、今日も生きている。

でも、そんな恵まれている生活を送っているのに、毎日孤独に潰されそうになりながら生きている。正確に「孤独」の意味を当てはめると、これは孤独ではないかもしれない。でも経験上、これは孤独だ。

寂しいと感じることが増えた。多分ないものねだりなんだろうな、と思う。一緒にいればいるほど、一緒にいない時間を意識してしまって、寂しい。誰かと一緒にいれば忘れられるのに、一人になると思い出してしまう。そして、潰されそうになる。主に、夜にやって来る。

谷川俊太郎の詩に、「二十億光年の孤独」というものがある。その中に、「万有引力とは ひきあう孤独の力である」という一節がある。万有引力にはすべての物質に存在し、引き合っている。でも、孤独だという。すべての物質が引き合っているはずなのに、どうして孤独になるんだろう。引きあえば引き合うほど孤独になり、もとめればもとめるほど孤独になる。引力はどんどん強くなっていくのに、二十億光年は二十億光年のままだ。計画を立てて、ロケットやワープ装置の準備をして、覚悟を決めて、やっと二十億光年先の星に会いに行ける。実際は二十億光年もなくて、たぶん地球と火星くらいの距離なんだろう。もっと遠い距離でも上手いこと光ってる星はいくつもある。それでも、茫漠とした距離が感じられる。月と地球みたいに、常に隣にいてくれれば、100万円をだれかにばら撒く程度でいつでも会いに行けるのに。

 

 

 

 

 

二十億光年の孤独   谷川俊太郎
 
 
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
 
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
 
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
 
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
 
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
 
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした