2017-01-01から1年間の記事一覧

クリスマスの僥倖

Aさんが欠席していることを知った彼は、途端に物悲しげな顔になった。 クリスマスということもあり、出席している人数はまばらで、その人たちは、みんな真面目そうな、悪く言えば地味で恋人なんていないような、そんな風貌の人たちばかりだった。僕もそのう…

赤提灯と白い月

「冷夏が続いたせいか今年はなんだか時が進むのが早い」 とはよく言ったものだ。イヤホンから聞こえてきた歌詞に思わず納得してしまう。 半袖半ズボンで外に出た。なんだこれは。肌寒い。それに、5時半なのにすでに日が傾き始めている。僕だけ夏に置いて行か…

通り雨

「散々悩んで時間が経ったら 雲行きが変わってポツリと降ってくる」 雨粒の落ちてくる空を眺め、傘を開きながら好きなバンドの曲の一節を思った。 無性にカツ丼が食べたくなった。習慣的に食べてるわけでもないのにそう思った。そうしてふらりと駅前の蕎麦屋…

善玉菌-フランケンシュタインの恋を見て-

菌。 あなたはこの言葉を聞いた時どんな言葉を想像するだろうか。 バイ菌。カビ菌。虫歯菌。 もしくはもっと抽象的に。小さくて目に見えないもの、とか、人を蝕むもの、とか、汚いもの、とかそんなことを考えるだろう。 少なくとも、「食べたい」とか「ペッ…

ソール・ライターはパンチラである

「全裸よりパンチラの方が絶対抜ける」と彼は言った。「パンチラを見逃したら死にたくなる」とも言ったし、「バカかお前。パンチラを見るために階段は存在してるんだよ」とも言った。僕はそれに対してずっと理解しかねていた。 なぜパンチラはそれほどまでに…

人類の普遍的成長について

小さいときから、何かの初めは楽しく、それなりに上手にできるが、初級者から中級者への壁にいつも登れずに、絶望していた。 どうして続かない。なぜこんなにも難しいんだろう。極めることがどうして出来ないんだ。極めた人達というのは輝いている。私はその…

悪魔の囁き

「お前みたいな何も喋れない、喋ろうともしないやつがどうして飲み会なんて行くんだよ」 この声が聞こえてくると、僕は「またか」と思う。「うるせえな。喋れないから行くんだろうが」「周りはお前のこと面倒なやつだと思ってるぞ」僕は何も言い返すことがで…

ある中学生の信仰

僕にとって、そのバンドは哲学と言っても差し支えなかった。 ピアノとギター、電子音やドラムの音。そして透き通るようなボーカルによって構成された音、あまりにもストレートすぎる歌詞。それらによって構成された彼らの音楽は、良い意味で「幼稚」だった。…