手記 ③

2/7(金)

東京は冷凍都市さながらだった。鉄のように冷たい風がビルの間を吹きさすんだ。肩を揉んでもらった時、自分の肩があまりに硬すぎて(カタだけに)思わず笑ってしまった。これもすべて冬の寒さのせいだ。

久しぶりに他人と会話をした。久しぶりに表情筋を動かし、喉を震わせ、目を細めた。自分の声が綺麗だとは思わないが、親戚の子どもに久しぶりにあったかのような懐かしさを覚えた。27の歌詞が僕の心に刺さった。結局のところ、僕はこうして生きてきてしまったのだ。加えて、一人にはなりきれずに、誰かのことを想っているのだ。それは紛れもない事実である。どんなに心を閉ざしても心は叫びたがっている。僕は僕自身の気持ちに素直になるべきであり、僕のために僕を生きるべきでもあった。それは非常に難しい。自分で選択すると言うことには常に責任が付きまとう。厄介だった。ココアは今日も暖かく、甘かった。その甘さに最近の僕は虜になっている。一人で流していく生活は自由で、それなりに充実していて、それなりに退屈だった。LINEの通知はいよいよ100件を超えた。だが、いまだに怖くてそのままにしている。ただ、近いうちにそれらに返信しなくてはならなかった。

他人はこんなに愛せるのに、自分をどうしても愛せない自分の天邪鬼を恨んだ。それにしても、僕は僕が憎くてたまらないのだ。なんて悲しい運命だろう。僕の僕自身による冷たい言葉に触れるたびに、僕の心は鉄の塊のように重たくなっていってしまうのだった。これもすべて冬の寒さのせいだ。