手記 ②

2月6日(木)

 

「八方美人、という言葉が鍵となるかもしれないね」とあの医者は言っていた。僕はそんなわけがないと思っていたが、次第にそのキーワードが頭の中を回り始めた。結局のところ、僕は誰にも嫌われたくないのだ。でもそれはみんなも同じでしょう。

セックスに対して考えなければならなかった。なぜかと言うと、それに関する本を読んだからだ。恋愛においてセックスが付き纏うことに怒りにも似た受け入れがたさを感じていたが、いずれ僕はそれを受け入れなければならないだろう。なぜなら、人間に腕がついているのと同じように、また、人間が食事をしたり排泄をしたりするのと同じように、人間はセックスをしなければならないからだ。僕は清潔でなければいけない。それは純潔でなければならないと言うことではなく、あくまで雰囲気や臭いの話である。

書かなければならないことを忘れてしまった。多分これは思い出せないだろう。記憶はいつも手に届きそうで届かないところにある。何にせよ同じだ。

東京、東京、と切実な叫びが聞こえる。しかしひょっとすると切実ではなく、単なるパフォーマンスなのかもしれない。これはよく分からなかった。だが、フィクションかノンフィクションかなんて音楽を聴いているだけの僕にとってはどうでもいいことだった。

SNSの投稿を、携帯にかじりつくようにして待ち構えていたあの時よりは幾分か心が楽になった。待ち構えるなんてバカバカしい、と思うだろうか。でも、あの時の僕にとってはそれがすべてだった。

書きたかったことを思い出した。以前、先生に「内部+外部=全体概念ならば、内部=全体概念である」と教わったことを思った。そして、生活から外部を排除することにした。その結果、確かに「内部=全体概念」的であった。マインクラフトにおいて孤独を感じないのは、そもそも世界において主人公一人だけなので、一人なのが当たり前だからである。しかし、現実世界で生活していると、いずれは限界が来る。限界が来たならば、再開する最初は、まだ一度も遊んだことのない彼とが良いかもしれないな。なんてことを思った。しかし何を話すんだろう。会話は続かなそうだが、もしかすると白熱した話が出来るかもしれない。できるならば二人きりで話したい。本のことなどを話すのも良いかもしれない。

明日は久々に朝が早い。