TONIGHT

「小学生の時に習い事をたくさんしておけばこんなことにはならなかった」そう思っていた。だが、小学生の時に遊び呆けた代わりに残してきた思い出は数え切れないほどあった。マンションでやった鬼ごっこ、少ないお小遣いを持って行った駄菓子屋、今は変わってしまった五時のサイレン。公園で固まってやっていたゲーム。語り尽くせないほど思い出は残っていた。そして、それを共有できる仲間もまた、いた。間違いなく僕たちは同じ時代で同じことをして生きていた。今では全く見る景色が変わってしまった公園や道路を、缶チューハイを持ちながら歩く。

中学。何かに疑問を持ち始め、それを解決してくれる何かもまた、見つかった。それは時にフジファブリックであったり、SEKAI NO OWARIであったりした。「自分しか知らない音楽」がそこにはあった。あの時聴いていた音楽を聴くと、今でもあの時の気分を思い出す。好きな子が好きだった作家の本を読み漁ったこと、月曜の朝必ずジャンプのネタバレをしてくる友達、めちゃくちゃなことをして先生に死ぬほど怒られたこと、初めて付き合った人の家から帰る途中に「花鳥風月」を聴きながら見た夕焼け。今でも彼女はあの家に住んでいるのだろうか。彼女に初めて触れた公園、彼女の家の下で何時間も話したこと、別れが惜しかったこと、別れ際に撫でた髪の毛、友達にからかわれながら歩いた帰り道。結局最後はあっさり振られて終わったが、僕にとっては大恋愛だった。そんな中、親友たちと共に闘った受験。第一志望は受からなかったが、親友と3年間同じ高校で苦楽を共にした。

高校。その親友が、好きな人に振られた直後に電話をすると萎れた声で間の抜けた返事をしていた。僕も彼女に振られた直後で自暴自棄になったこと。それからは話したくもない暗黒。それでもいっしょにいてくれた友達。二人で帰った田園都市線。隣町まで歩いた道。成し遂げられることはなかったのかもしれない。それでもその生活には、確かに意味があったと信じたい。

中学の時、4年間好きだった人に告白して、振られて、それはそれは散々な振られ方をして、思い出したくもないし、今でも顔を合わせることに抵抗がある。それでも彼女を好きになっていなかったら、僕がBase Ball Bearと出会っていた今はなかっただろう。図書館戦争のエンディングテーマが全てを変えてくれた。その失恋が確かに僕を今の素晴らしくて愛おしくて、僕の全てであるこのサークルに導いてくれた。それから、中学を卒業したら二度と会わないかもしれないと思っていた友達。重大な相談をしたり、何時間も夜道を歩いたり、好きな音楽や小説の話をして、時には思い出話をして、そんな友達と、僕は前まで親友になれるとは思ってはいなかった。想像もしていなかった未来がそこには待っていた。今の諸問題だって確かに辛い。辛すぎるし、もうやめようとすら思った。でも、それもきっと予想もできない道に繋がって、「あの時のあの経験があのことに繋がったから結果的には良かった」と思える日が来るだろう。いや、来てほしい。もし来なくても、思い出になってしまえばそれは間違いとか正解とか、そんなことは考える必要がなくなるんだろうな、と思う。何度も何度もやめようと思った道だったが、やめなくて良かった。自信を持って言えるわけではないが、今夜はそう思える気がする。だって、振り返って掘り起こした道は、こんなにも輝いていたから。他人が獲得していて、僕は取り損ねた宝物だってある。歩いてきた道はもう絶対に引き返せないから、取り損ねた宝物は一生手に入らないと思う。他人の道と比べると、地味かも知れないし、整備されてないかも知れない。でも、これが僕の歩いてきた道だ。きっとこれからも歩いて行くだろう。たくさんのいい思い出と、音楽や小説、それから素晴らしい友人たちを連れて、僕は歩いて行く。

 

 

 

 

SEKAI NO OWARI「TONIGHT」

 

不思議に感じる瞬間が時々ある

僕が今ここにいるというこの事実が

僕に特別な力があるとはとても思えないし

ひとりきりではできなかったことだよ

 

突然世界が真っ暗闇になったように見えた

でも少しずつ目が慣れて明るくなってきた

今まであまりに強すぎる光に照らされてたから

目がくらんで気付けなかっただけだった

 

大切な「イマ」はどんどん変わっていく

忘れてく思い出もたくさんあるけど

終わりの時間は確かに近づいて来てる

だけど今夜だけは「イマ」が愛しく思えそうなんだ

 

自分はなんにもできないと思っていた

でもそれはなんでもできるって事みたいで

望んだ人にはなれないのかもしれないけれども

僕は僕になることだけはできるんだ

 

大切な「イマ」はどんどん変わっていく

忘れてく思い出もたくさんあるけど

終わりの時間は確かに近づいて来てる

だけど今夜だけは「イマ」が愛しく思えそうなんだ

 

今の自分がどうしよもなくキライで

ここまでの道が灰色に見えてたとしても

この長い道が君へと続いていたなら

また一歩前に進む事ができそうな気がするんだ